【作曲実践】ボカロPが17時間で1曲を完成させた全工程まとめ | G.C.M Records

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【作曲実践】ボカロPが17時間で1曲を完成させた全工程まとめ

はじめに

こんにちは、アンメルツPです。
先日公開しましたボカロ曲「春待ち八重桜」、おかげさまでご好評をいただきありがとうございます。

今回の曲はTwitter企画「ぽかぽか春の鏡音まつり」の中で、
2020年3月20日(金)~22日(日)の3連休ですべてを作って公開することに挑みました。

その結果、3日間でトータル17時間かけて一曲を作ることができました。

その進捗状況は、Twitterにて1時間ごとに随時画像として公開しておりましたが、
今回の記事はそれをまとめて、解説を加えたものとなります。

作曲・作詞などすべてを網羅した「1曲を最初から最後まで作る方法」となっておりますので
ボカロ曲の作り方の参考になれば幸いです。

何かと自宅での作業が多い今日この頃、休日の過ごし方の参考としてもご覧頂けると嬉しいです。

当サイトの記事「39分でわかるボカロPとして活動を始める方法」では、
以下の6つの工程でボカロ曲を作ると説明していました。

(1)構成を考える
(2)作曲(メロディづくり)
(3)作詞
(4)編曲・打ち込み ※ボカロ調声も含まれる
(5)ミックス
(6)マスタリング

ですが実際に私がやっていることは、この工程を前後したり一緒にやったりと、
単純に(1)~(6)にはっきり分けられるものでは実はありません

ここに書くのはあくまで私のやり方で、ボカロPによってもやり方が全く違います
肝心なのは、何曲も作って自分なりにやりやすい方法を確立していくことだと思います。

自分でも何が得意なのかは最初はわかりませんので、
楽曲制作を繰り返すことでだんだん自分の強みを認識していくことが大事です。

それでは具体的に見ていきましょう。

使用DAWは無料の「Cakewalk by BandLab」です。
音源やエフェクターには各種有料のVST・VSTiを使っています。本文中で随時紹介していきます。

作曲・編曲

1時間目 サビ打ち込み

・サビのドラムを打ち込む。
ベースパターン(仮)→ピアノ(仮)→メロディの順に打ち込む。

「Cakewalk by BandLab」のピアノロール上にノートを打ち込んでいきます。オレンジ色のはメインメロディ。
「Cakewalk by BandLab」のピアノロール上にノートを打ち込んでいきます。オレンジ色のはメインメロディ。

私の場合、どの曲でもほぼ一番に打ち込むのがサビ8小節分のドラムです。

この辺は「お風呂で最初にどこを洗う論争」に似ており(?)、
人によって実に様々な意見が出てきます。

メロディーを作ってからオケに着手する人も多いですが、
私は最初に曲のテンポ(BPM)を決めてそこのドラムパターンを打ち込んでしまわないと
そこから先のアイデアが浮かびにくいというタイプです。
家で言うところの基礎となるドラムから打ち込んでいく感じですね。

もっとも、ある程度作業工程(1)「構成を考える」ことは済ませているのが前提です。
私の場合DAWを立ち上げるのは、多くの場合構成というか、曲のコンセプトを考えた後です。

曲の特徴を一言で表せるようなキャッチフレーズをこの段階で思いついていると、
それに向かってとても構想を固めやすくなります。

この曲の場合は、
「遅咲きの八重桜を、コロナウイルスの影響で色々なものが延期している今の状況にダブらせた曲」
というコンセプトをすでに思いついていたので、あとはそれに向かって粛々と進むだけでした。

これが実際の作業時間を短くするうえで重要な事だったと思います。
そもそも何を作るかっていうのを考えておかないと、成果物もブレてしまうということですね。

コンセプトの作り方もノウハウがあるんですが、
それはここに書くには余白が狭すぎるのでぜひ私の本を買ってください。(宣伝)

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次に作った8小節をループさせながら、
ベースパターンをベタ打ち(コードの一番下のルート音を延々と単純に打ち込む)で作ります。

ルート音を打ち込むっていうことは、この時点でコード進行も一緒に考えるのを意味します。
この時点でコード進行を考えておけば、あとはそのレールに沿って他の楽器を増やしていくだけです。

この曲に関しては限られた時間の中で作るので、
自分が一番得意で、作っていても楽しい「小室進行」で作ると最初から決めていました。
「VI→IV→V→I」というコード進行です。

キーは、「レ」を起点とするDメジャー(ニ長調)で、こちらも私の曲で作り慣れているものです。

小室進行の良い所は、起伏のあるドラマチックな展開にしやすく、メロディも作りやすいところです。
これが好きなのは私自身が1990年代のJ-POPに強く影響を受けていたからでもあるのですが、
初心者の方でもメロディーが自然に浮かびやすいコード進行なのでおすすめです。
ボカロ曲でいうと「千本桜」などでも使われている定番の進行です。

ピアノも、最初は単純にコードを鳴らすパターンを作っていきます。
後から曲のイメージに応じて修正していくつもりです。

ドラム・ベース・ピアノという
「リズムとコードを両方感じられる最低限の構成要素」ともいえるものを打ち込んだところで、
肝心のボーカルが歌うメロディーを打ち込んでいきます。

ここまで大体1時間ぐらいでざっくり完成しました。

ドラムは目的な音を素早く選べる、XLN Audio「XO」
ベースにはリアルな音をこれも素早く決められる、IK Multimedia「MODO BASS」
ピアノにはCakewalkが無料化する前のSONARに付属していた「TruePianos Cakewalk」(単体製品版はこちら)
ボーカルの仮メロディには、ピコピコ音がオケに埋もれない「Magical 8bit Plug2」(無料)を使っています。

2時間目 サビの装飾

・コーラスを作る。
・エレキギターを入れる(打ち込み)。
・小室系にしたいのでベル音を入れる。
・ストリングスを入れる。

コーラスとギターとベルを足してサビの音を分厚くする
コーラスとギターとベルを足してサビの音を分厚くする 

2時間目は、最初にサビのメインメロディに対するコーラス(ハモリ)を作っていきました。

メインのメロディをコピーして、コーラス用のトラックに貼り付け。
3度下や6度下などが一般的にはコーラスに入れやすいと言われていますので、
今回もそのように作って行きました。

次にギターを入れていきます。
ギター音源には「RealStrat5」を使っていますが、
鍵盤の組み合わせによって比較的簡単にギター独自の奏法を再現することができるので気に入っています。

ピアノの部分で既にある程度のコードの構成音は分かっているので、同じように打ち込みます。

次に90年代のサウンド再現には欠かせないベル音源を入れました。
こちらにはDios/シグナルP制作の「TwinkerBell」というベル専用音源を活用しております。

それからJ-POP系のドラマチックな曲にしかったのでストリングスも入れました。
こちらはセールの時だけ無茶な値引きをすることで有名
「Orchestral Companion String」を使用しております。

それと同時に、違和感があるフレーズの修正や練り上げも行っていきます。
サビのメロディーとドラムのパターンが合わない時はドラムを少し修正したり、
ベタ打ちだったベースラインに起伏をつけてリズムを刻んだりします。

ここで作ったものは後でイントロや他のパートにコピペを繰り返すことになりますので、
私はこの段階で、サビだけループの完成度をある程度高めるようにしています。

3時間目 イントロ・Aメロ制作

・サビをコピペしてイントロを作った。
・イントロの楽器にはエレキギターと、申し訳程度の和風要素を入れるため琴っぽい弦音源を追加。
・Aメロに着手。楽器ごとにところどころフレーズを組み替えてAメロのオケを作っていく。

サビを4小節、Aメロを8小節作る
サビを4小節、Aメロを8小節作る

2時間が終わったところで、サビがある程度形になったのでここで次のフェーズに移ります。
時間をかければかけるほどクオリティは高くなるので、どこで妥協するか本当に悩みどころですが、
限られた時間の制作においては、もう完成したと思ったらすぐ次に行くという覚悟も必要でしょう。

サビとイントロは同じコード進行でほぼ同じ楽器を使うことに決めました。
なのでサビをまるまるコピペして作っていきます。メロディだけを削除。

イントロのメインを張る楽器として、新たにエレキギターをもう一本立ち上げました。
音源は同じ「RealStrat5」で、かけるギターのエフェクター(Guitar Rig 5)のプリセットだけを変えます。

それから琴っぽい音源も追加して和風っぽさを少しだけ出します。
総合音源「OmniSphere 2」のオリエンタルな楽器のコーナーに、
種類は少ないですがそれっぽい音源があったので採用しました。

次にAメロに着手していきます。
ここもコード進行を同じにしましたので、最初に行うのはサビのコピーです。

ただサビからイントロに比べると、変える部分は非常に大きいです。
楽器の展開を少なめにしたり、一部の楽器の音程を変えたり、
メロディもサビ起伏が少なくま始まりの予感を感じさせるものを意識して作ってきました。

4時間目 Bメロ制作

・Aメロの残りの楽器を整えた。
・Bメロに着手。ここはコード進行を変えて、定番の王道進行を使いつつサビにつなぐ形に。
・メロディをはじめBメロの7割ほどのオケを制作。

Aメロの後ろにBメロを作るのと、最初に作ったサビ(0サビ)をコピーして1番サビとする
Aメロの後ろにBメロを作るのと、最初に作ったサビ(0サビ)をコピーして1番サビとする

4時間目の最初は、先ほどの続きとしてAメロのアレンジを変えていきました。
ベースの刻みフレーズなどを少し変えたり、ギターもゆったりしたフレーズになっています。
そういった1パートごとに気を遣うことが、最終的にクオリティーの向上につながります。

次にBメロに着手します。

最初から最後までコード進行が同じ場合、
J-POPだと少し飽きられるというか単調な展開になってしまう場合もあります。

洋楽や日本の音楽の中でも最近はトラックものが増えていて
全部が一つのコード進行でも魅せる曲が増えていますが、
ここではちょっと展開や歌詞に載せる心情も変えようという意図で変化をつけてみました。

ここのコードは小室進行と同じくらい定番とされている「王道進行」を使います。
これは「IV→V→III→VI」、4536ですね。
明るさと切なさを併せ持つコードなので多くの楽曲に採用されています。

Bメロは、ギターの刻むパターンをAメロやサビとはまた変えてみたり、
ピアノだとこれまでずっとコードを弾いてたものを一音ずつ弾くといった
大きめの変化をつけてみます。

このBメロの終わりに、あらかじめ次のサビをコピーか移動しておくと
Bメロからサビに突入するところをループさせながら打ち込めるので
求めているイメージに近づけることができます。

4時間目には、Bメロの完成度が7割というところまで進みました。

5時間目 2番・間奏制作

・鳴っているかわからないくらいのシンセパッドを追加する。
・Bメロの続きを作ってざっくりワンコーラス完成。
・コピペして2番を作る。
・0サビや1番Aメロの音を適度に抜いてそれっぽくする。
・ギターソロを作っている途中で時間切れ。

だいぶ曲が横に広がってきました
だいぶ曲が横に広がってきました

先ほど7割まで完成していたBメロの続きを作りました。
これでざっくりワンコーラスが完成したことになります。

2番に着手する前に全体を見渡して何回か聴いてみるんですけれども、
その途中で、鳴っているかわからないぐらいのシンセパッドを追加しました。
これには「SampleTank 3」(最新版は4)のシンセパッド音源を使っています。

はっきりとは聞こえないけど全体の空間を埋める楽器があると
全体として曲の響きがちょっと違ってくることもあります。

これで1番が無事完成したので、1番全体をコピーして2番を作ります。

ここで1番のAメロに手を加えます。
どうしてコピーした2番ではないかというと、
これまで「Aメロ」と称して作っていたものは、実は2番のAメロを想定した場所だったのです。
そこから音を抜いて、1番Aメロがより静かになる、というやり方をしています 。

ボカロ曲の場合は、2番で急にジャズになるといった大胆な変化をする曲もありますね。
そのように新鮮な驚きを与えたい場合、2番もがっつり作り込むこともあります。
逆に最近の洋楽などでは、変化を抑えたものが流行っているという、
両極端な傾向があるように思います。

また、同じようにして0サビの音を抜いて導入部分っぽくします。

さらに2番の後にもイントロをコピーし、そこにギターのソロを作っていく段階となります。

これまでのイントロでは、琴にやや隠れてちょっと後ろになっていたギターが
(実際にはずっと後のミックスの段階ではじめて後ろに行かせるわけですが…)
ここで主役としてフレーズを奏でることになります。

ここまでが1日目(寝るまで)の作業となり、次の6時間目からは2日目となります。

6時間目 終盤制作

・ギターソロの続き
・ギターソロのあとにBメロと最終サビを入れる
・Bメロと最終サビをそれっぽくいじる

最終サビまでをコピペ→修正して作っていく
最終サビまでをコピペ→修正して作っていく

途中で終わっていたギターソロの続きを打ち込んで完成させます。

ギターソロの作り方にもいろいろありますが、
今回は最初のフレーズから順番にピアノロールで合いそうな音をポチポチ置いていく
オーソドックスなやり方にしました。

他の方法としては、MIDIキーボードで実際に何回かソロを弾いてみて、
そのうち一番良かったものを加工してつなぎ合わせるやり方もありますね。

ギターソロのあとに、B面と最後のサビをコピペして入れます。

ソロ後のBメロは少し静か目にしたり、イントロにも使った琴を入れてて変化をつけました。

最後のサビはこの曲では3回繰り返していまして、
最後のサビは半音上げるという日本人が好きなよくある展開をやっています。
いろいろな曲で使い古された手法ですが、私としてもこの手法は大好きです。

ちなみにここまで「25分作業、5分休憩」を繰り返して作業を行っています。
いわゆる「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれるものです。詳しくはググってください。
ここの2回目のサイクルの「5分休憩」に、進捗をTwitterに投稿していったというわけですね。

7時間目前半 アウトロ制作

・アウトロ完成
・メロディラインのMIDIをボカロに読み込ませる。これでボカロがラララで歌う状況になる
・他のトラックはフリーズさせて負担を軽く

作ったメロディを鏡音レンにラララで仮に歌ってもらいます
作ったメロディを鏡音レンにラララで仮に歌ってもらいます

最後のサビのあとに、曲のエンディングとなるアウトロの部分を作っていきます。
テンポを最後に遅くしたりなどの、エンディングっぽい演出も行っていきます。

これで無事に曲のオケが完成しました。
この後も違和感がある所は随時修正や音を足したりもしますが、
まずは一段落ということで作詞に移っていきます。

おもにコード進行の力ではあるんですが、短い時間で集中して作業をしたおかげで
自分ではそれなりに満足して、自分らしい曲ができたという実感はありました。

作詞を本格的に始める前に、これまで仮の楽器を使っていたメロディラインを
VOCALOIDに歌わせたいので、完成したメロディラインをMIDIで書き出して
それをVOCALOIDエディタ(私の場合Piapro Studio)に読み込ませます。
これでボカロが「ラララ」で歌う状況となります。

他のトラックは一旦フリーズさせてMIDIからオーディオファイルに変換し、
パソコンの負担をボカロの処理だけに集中させます。

作詞

7時間目後半 ネタ集め

・作詞開始。音声入力でとにかくしゃべって曲のタネとなるものを文字に起こしていく 

リアルタイムで刻まれていく自分の文章を見ながらしゃべります。あとから誤字を修正して見やすく
リアルタイムで刻まれていく自分の文章を見ながらしゃべります。あとから誤字を修正して見やすく

そして作詞をいざ始めるのですが、
ここではGoogleドキュメントの音声入力によって
曲のタネとなるものを文字に起こしていく方法をとりました。
とにかく何でもいいからこの曲についての思ったことをしゃべっていきます。

しゃべることが少なくなってきたら、
「感情類語辞典」のような本や、類語検索サービスといった外部の知識も参考にしながら
強制的に言葉を絞り出していきます。

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ここで多くの言葉をひねり出すと、後から歌詞にメロディを当てはめる選択肢も増えますね。
「自分が言いたいことは何だろう」というものを喋りながら整理できるのが
このやり方の大きなメリットです。
これに25分、まるまる1サイクルぶんの時間をかけます。

音声入力は、作詞以外にもブログや本を書いたり、ツイートやメールに返信するなど
様々な目的に私は使っています。

テレワークなど、自宅で様々な作業ができるようになると、気兼ねなく声が出せるので
これからさらに音声入力の価値は上がってくるのではないでしょうか。

8時間目 ネタ分類

・各メロディに何文字入るかを調べる。

各メロディの文字数を調べてメモしていく。こういうのDAWから自動でできたらいいのにね
各メロディの文字数を調べてメモしていく。こういうのDAWから自動でできたらいいのにね

・曲のタネから歌詞になりそうなものをひたすらピックアップして、分類する。
(1時間の大半がこの作業、まだ途中) 

歌詞を1番Aメロ、2番サビ…などに分類していく
歌詞を1番Aメロ、2番サビ…などに分類していく

アイデアを出し切ったところで、それを整理していきます。
「Xmind」というマインドマップが描けるソフトを使っています。

まずは、これまで作ったメロディに何文字ずつ入るかを調べてリストアップをします。
作った曲を、文字数を口ずさみながら数えていくというのが地味ながら一番いいやり方です。
これでメロディに入れるフレーズを考えるのが楽になります。

そして、7時間目にしゃべった曲のタネから歌詞になりそうな単語や文章を
ひたすらピックアップしていき、Xmindに入力を繰り返し行っていきます。

理想としては200個以上の言葉をリストアップしたいところです。

そしてその文章の羅列をどの場所に使えそうか、
「この単語はAメロっぽい」「このフレーズはサビっぽい」というのを分類していくことで
自分が何を伝えたいかをだんだん明確にさせていきます。

この方法のメリットは、システム的に歌詞をまとめ上げられるという点にあります。
歌詞と言うと「才能ある人が頭から浮かぶもの」みたいにとらえる人が多いんですが、
このようなステップを踏むことで、理詰めで必ずひねり出すことができます。

このリストアップと分類は頭を使う重要な作業で、どうしても長時間を要します。
今回もかなり急ぎましたが1時間半ほどかかっているかと思います。
単純に200単語に30秒ずつかけるとそれくらいになりますし、仕方ない面もありますね。

9時間目 1番サビの作詞

・サビから歌詞ができあがっていく。語彙力がほしい。

 ()内は他の部分の歌詞との整合性も取りながら微調整していこうと思っているメモです。
()内は他の部分の歌詞との整合性も取りながら微調整していこうと思っているメモです。

前の時間の続き、単語・文章のリストアップと分類をやっていきます。

一通り分類が終わったら、 メロやサビのパートごとに歌詞を考えていく作業に移ります。
ピックアップした文字数に、言いたい事をまとめて埋めていくことになります。

一番作りやすいのはサビです。
一番の主張がまとまっていますし、作曲の段階からぜひ入れたいと思っていたフレーズも
躊躇なく入れることができるからです。
この曲の場合はサビ初めの「春を待つ八重桜のように」というフレーズがそうですね。

ラップの楽曲など、韻を含めて冒頭から作り始めていくほうがいい場合もありますが
この曲では、A・Bメロは後回しにしていきました。

普段はひとつのパートが完成したらPiapro Studioにその歌詞を入力して
実際に歌わせて違和感がないかも確認していくのですが、今回は時間が限られていたので、
全部のフレーズが完成してからまとめて歌わせる方法を取りました。

10時間目 サビ・平歌の作詞

・1番Aメロと1番Bメロを残して、仮の歌詞が完成。

0~最後のサビまでが先に完成したので、それに繋がるような歌詞を作っていきます。

前の曲や別の場所で使ったフレーズはなるべく使わないように
(「世界」とかは便利な単語なのでついうっかりたくさん使いがち)
もしくはあえて対比になるように意識して作っていく、などを取り組んでいく
パズルみたいな作業です。

そうするとよくあるのがAメロが最後に残るパターンです。
今回もそうでした。

Xmind上で歌詞を作っていったものをテキストファイルに移植して、これをそのまま犬飼さんにお渡ししました
Xmind上で歌詞を作っていったものをテキストファイルに移植して、これをそのまま犬飼さんにお渡ししました

そして、実はここまで歌詞が出来上がった段階でもって
7:24(犬飼)さんに、イラスト描けませんかということで急遽依頼をしました。

この時点で2日目の夕方であり、作業時間が1日しかないのでダメで元々という覚悟だったのですが、
大変ありがたいことに引き受けていただけることになりました。
ここまでに完成した仮の曲(ラララで歌っているもの)と歌詞を送って、制作をお願いしました。
残りは進捗があり次第随時送るという感じでした。

※犬飼さんがめちゃくちゃ筆の速い絵師さんで、 かつ三日間限定のお祭り企画だからできたことなので、
普通の動画制作においては皆様はあまりマネしない方がいいと思います。
他の曲では、分量にもよりますが1ヶ月くらい制作期間を置きますので…

11時間目 歌詞完成

・残りの歌詞を書いた。一部のフレーズも見直してひとまず歌詞は完成。
・ボカロに歌詞を流し込んで歌ってもらう。

残った1番Aメロ、Bメロの歌詞を書いていきました。

全部のメロディが歌詞によって埋められた時の安堵感、達成感は本当にひとしおです。
この時点で最低限の世に出せる曲と歌詞が完成して、
終わりの目処が見えてきたということになりますからね。

ひとまずこの歌詞をすべてボカロに流し込んで最初から最後まで歌ってもらいます。
この瞬間は、本当に曲に命が宿ったような感覚がありますね。

完成した歌詞をPiapro Studioに入力して、最初から最後まで一通り歌ってもらいます
完成した歌詞をPiapro Studioに入力して、最初から最後まで一通り歌ってもらいます

ここで何度か通して聴きながら、歌詞を流し込んでみて違和感があったフレーズや、
改めて歌詞全体を見渡して修正したほうがよさそうな言葉を直していきます。

10時間目が終わった時に完成していた歌詞の画像を上に貼りましたが、
最終的な歌詞(新曲紹介記事に書いています)とはまた少し違うのがわかるかと思います。
どこが変わったのかを細かく見てみると、ああそういうことなんだなっていう風に
見てもらえるとちょっと嬉しいですね。

例えば2番のサビは

(仮)遅咲きの八重桜のように手探りで進む

(完成)遅咲きの八重桜のような強さをください

と修正しています。

直接的に言いたいフレーズは「手探りで進む」ではあり、
ゆっくりでもいいから自分らしい花を咲かせようということだったんですが、
桜はいかんせん植物ですので、「進む」という比喩が合ってるかどうかって
冷静に考えたらちょっと違和感があることに気づきました。

「強さをください」と訴えかけることで、自分自身が「手探りで進む」イメージを含ませつつ
八重桜の持つどっしりとした包容感、美しさも同時に表現している、という感じになりました(当社比)。

ここは「プレバト!!」の俳句の夏井先生にでもなったつもりで
冷静に一回文章全体を見直してみることも大事だと思います。

ミックス

12時間目 ざっくり調整

・各トラックを書き出してエフェクターをかけていく(ほとんどNeutron使用)
・トラック間の音量を調整

Neutronを各トラックに挿入、自動ミックスを行った結果からEQを手動で少し操作したりもします
Neutronを各トラックに挿入、自動ミックスを行った結果からEQを手動で少し操作したりもします

ボカロは歌詞だけ打ち込んだベタ打ちの状態のまま、ミックスの過程に入っていきます。
まずはピアノ、ギター、ストリングスなど、これ以上は修正することはないと判断して
主なトラックをオーディオとして書き出していきます。

まずはドラムとベースとボーカルを再生させつつその中でバランスを整えて、
次に1パートを足してまたバランスを整えてというのを繰り返しいてきます。

短時間でクオリティを高めるため、
エフェクターとしては「Neutron 3」をほとんどのトラックに適応しています。

Mix Assistantによる自動ミキシング機能を適用するだけである程度いい感じにしてもらえるんですが、
中には私の意図と違うことも提案したりするので、
何回か聴き込んで今一番良さそうな印象のミックスを選んでいきました。

本当はXOで作ったドラム隊もパーツごとに書き出したほうが最終的なクオリティを高められますが、
今回はこちらも時間の関係からドラム全体を一括して処理しています。

ドラム全体には、「Transient Master」という、KOMPLETEを買えばついてくる
トランジェントシェイパーを使用しています。
ツマミをひねるだけでドラムの音全体が引き締まるのでとても重宝しています。

13時間目 細かく調整

・パートに応じて楽器のボリュームを調整
・Neutronのマスキング検出機能を使ってトラックを微調整
・MAutoAlignを音が被りそうなトラックに適用

緑の線がボリュームを表しています。
緑の線がボリュームを表しています

ミックスの続きを行っていきます。

Neutronといえども楽器が増えてくると、理想のミックスの自動出力は難しいです。
他の楽器とかぶっていそうな帯域を提案してくれるマスキング検出機能を活用しながら
手動でNeutronのEQをいじります。

楽器の種類によっては、100ヘルツ以下の帯域をバッサリと手動でカットも入れました。

また、「MAutoAlign」という、Melda Productionによる
複数の楽器間の位相を微妙にずらしてくれるプラグインも活用しています。

帯域が被っていそうな楽器に適用すると、なんかいい感じにちょっとだけ音の位相をずらして、
互いに喧嘩しあったり打ち消しあうということがなくなる…らしいです。
非常にふわっとした説明ですけれど、「適用するだけで音がちょっと良くなる」 ので
最近のミックスには必ずいくつかの楽器に入れています。

※プラグインご購入の際は、会計時にクーポンコード「MELDA4353228」を入力して頂くと、
Melda Productionのサイトで初回の購入をされる方は20%引きになりますのでぜひご利用ください。
(あと私にも購入額の10%が入ります)

これらのプラグインを活用して、限られた時間内で最大の効率を発揮できるように
ミックスを進めていきました。

それから、この状態では1曲を通して音量がすべて平坦な楽器パートとなっています。
そこで、メロやサビなどのパートに応じてボリュームを調整していくエンベロープを入れました。
プロのエンジニアの方はもっと細かく線を引くようです。

ボカロ調声

14時間目 歌声を決める

・リンレンのパート分け
・GENやクロスシンセシス、ビブラート設定

メインとコーラスで全4トラックを作って編集していきます
メインとコーラスで全4トラックを作って編集していきます

ここからはボカロの調声(調教)の作業に入ります。
今回は、鏡音リン・レンのメインとコーラスで合計4トラックあります。

まずは仮ボーカルとして全部レンに歌ってもらっていたものを、リン・レンにパート分けしていきました。
曲によっては細かいフレーズを交互に歌っていくこともありますが、
今回は1番の平歌がリン、2番の平歌がレンで、サビがユニゾンという分け方をしました。

細かい掛け合いがある曲に比べると若干作業は楽ですが、それでも4トラックあるので少し大変です。

各パートの調声方法はどれも比較的共通はしていて、
まずはGEN(ジェンダーファクター)やクロスシンセシス、ビブラートの設定など、
大きく歌声に影響を及ぼすようなパラメーターの設定を行っていきます。

リンレンデュエットの技術的な難しさとしては、
単純にユニゾンさせただけでは2人が同化してひとつの歌声に聴こえてしまうという点があります。
そこで、ビブラートのパターンやその他のパラメータを変える
上手く2人で歌っているように聞こえるようになります。

ここまでが2日目の作業となり、次からは最終日の制作となります。
昼に5時間、夜~深夜帯に4時間という作業でしたが、
体力・集中力としてはこのあたりが限度だと思います。

15時間目 メインパート調声

・メインパートの調声。主にVEL、DYN、ピッチベンドを操作する

上からピッチベンド、(前の時間にざっくり設定した)ブライトネス、ダイナミクス、ベロシティ
上からピッチベンド、(前の時間にざっくり設定した)ブライトネス、ダイナミクス、ベロシティ

3日目の昼の作業です。

鏡音リンのメインパートの調整を行っていきます。
滑舌の良さは言葉をどれぐらい強調したり切り離すかである程度決まります。
そこで、文節の区切りなどを大事にしていきます。

・単語の始まりの言葉などをDYN(ダイナミクス)のパラメーターを上げる
・単語の先頭となる言葉のVEL(ベロシティ)を小さくする

これによって、その単語の前の言葉の発声が短くなると同時に単語の始まりの言葉が強調され、
より聞きやすくなります。

これを細かく特定のパートごとにループしながら何度もやっていきます。
もう何十曲とやっているので半分流れ作業ではあります。

それが終わったらより「わが家のボカロ」らしい歌い方にするようにピッチベンドを少しだけいじります。

リンのメインパートが終わったら、レンのメインパートの調整を行います。
要領は一緒ですが、ピッチベンドなどの歌い方を少し変えることで
リンとレンの同化を防いで、キャラ立ちをさせることができます。

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16時間目 コーラス調声

・残りのパートを調声して書き出し。
・音量バランスを整える。

調声が終わってwavファイルとして書き出したものを、DAWのPiapro Studioがあるトラックに取り込みます(Inputだけ「無し」に変更)

リンとレンのメインパートが両方終わったら、コーラスパートの方にも少しだけ調整を加えます。
この時、メインパートとはまた別のビブラートを加えると、コーラスにより厚みを持たせることができます。

後はほんのちょっとだけグロウルを加えたりもありだと思います。
メインパートでグロウルを操作するとかなり声が変わりますが、
コーラスぐらいの音量だとあんまり目立たなく、同化しない効果だけがうまく出るように思います。

全パートの調整が終わったら トラックをwavファイルで書き出して、音量バランスを整えます。
何回か繰り返して違和感がないなと思ったら完成です。

マスタリング

17時間目 マスタリング

「T-RackS ONE」にてマスタリングと最終確認。

ここまでで出力したwavファイルを、マスタリング用の別のプロジェクトで編集していきます
ここまでで出力したwavファイルを、マスタリング用の別のプロジェクトで編集していきます

最後の工程となるマスタリングです。

「T-Racks ONE」という主にマスタリング用途のVSTエフェクターを使い、
音の最終的な完成を目指します。

「Ozone 9」も購入していたので、時短のために最初はOzoneの自動マスタリングを試したのですが、
何パターンかやってあまり自分の中でしっくりこなかったので、
最終的にはここ最近使い慣れている「T-Racks ONE」を使いました。

低音・中音・高音や音の広がり、PUSH(左の大きなツマミ。コンプレッサー機能)など、
比較的少なめのパラメーターの操作により、理想の音に素早く近づけます。

最後に曲全体を書き出して、無事に楽曲が完成しました。

おわりに

こうして3日目の昼に楽曲が完成しました。

前日にお願いした犬飼さんのイラストは、その日の夕方に完成。
夜に3時間ほどかけて動画を作って、無事にその日の23時過ぎに公開することができました。

今回はお祭り企画の中で集中して17時間で制作しましたが、
普段の曲だとジャンルにもよりますが、これの2倍ぐらいは時間をかけて作っています。

早く集中して作ることは、途中で気が変わって方向性がブレないためにも大事ですし、
曲の量産にもつながって経験を積めると思います。

ただワンパターンな進行や曲調などをいつも続けても実りは少ないので、
いかに新しいことをやって成長しながらも、
バリエーションを広げた曲作りをやっていければいいなというのが課題ですね。

皆様も、作品の制作時に1時間などで区切って進捗を記録してみて、後から振り返ってみると
客観的に実感自分を見つめることができるので
自分の好きなやり方や、得意・苦手なことが見つかるかもしれません。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

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著者「アンメルツP」について

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