【レビュー】VOCALOID5を発売後2日間で色々使ってみた感想と、購入検討にあたっての注意点

G.C.M Records by アンメルツP

ボカロP「アンメルツP」の活動記録サイト
鏡音リン・レンなどのVOCALOIDを使用したオリジナル曲やカバー曲を作っています。
ボカロ曲による同人CDや、作曲・DTM初心者のための同人誌も発行しています。

【レビュー】VOCALOID5を発売後2日間で色々使ってみた感想と、購入検討にあたっての注意点


2018年7月12日、ヤマハからVOCALOID5の発売がアナウンスされました。
即日発売が開始され、早速多くのボカロPやファンが反応していました。

私アンメルツPは、早速発売日に購入し、いくつかカバー曲を歌わせてみましたので
早速その使用感や感想などを書いていきたいと思います。

主な売りの機能とは

とにかく新しい機能が多いのですが、ひとつひとつの機能を見ると
その本質は、「既存のボカロエディタの範疇で出来るが、面倒くさいことを
新しくサービスメニューとして提供した」というものが多いです。
言うなれば「スーパーマーケットに新しくできたお惣菜コーナー」とか
「マニュアル車がAT車になった」
という例えが適切かもしれません。
その変わり「食材」「エンジン」自体の進化はそれほど無いです。

・VSTi、AUに対応

クリプトンのPiapro Studioのように、DAWの中から直接ひとつの楽器として
VOCALOID Editorを呼び出せるようになりました。

・歌詞のプリセット1,000種

サンプリング素材集の感覚で、クラブ系音楽の音ネタのようなフレーズを
VOCALOID Editor上にドラッグ&ドロップで追加することができます。
今のところ日本語は少なめ。
どっちかというとボカロメインの曲よりは、本当にクラブ系サンプリング素材としての使われ方を想定している感覚を受けました。

・歌唱スタイルのプリセット100種

今まで各自が手動で設定していた
「パートの歌唱スタイル」+「シンガーエディター」が
「スタイル設定」として再構築され、プリセットが登場しました。

内蔵エフェクターとパラメータのほか、
ロボットボイス(V4の「ピッチスナップモード」)や息継ぎのしかた、
音楽ジャンルによる歌い方の組み合わせがあらかじめ定義されています。
スタイルは自分なりに組み合わせたものを保存もできます。

「ベンドの深さ12%、アクセント80%」(~V4)よりは
「R&Bっぽいソウルフルな歌い方で、上手さは10段階の6くらい」(V5)
言われたほうが確かに直感的にはわかりやすいかもしれませんね。
今までこの部分をあまり気にしていなかった方は試してみる価値はあります。
逆にそのブラックボックスさが苦手な人もいるかもしれません。

・ATTACK / RELEASE EFFECT

今後ボカロPが特に大きくお世話になる機能のひとつかと思います。
これまでしゃくりなどを入れるときには、手動でピッチベンドや音量(DYN)のカーブを描いてきましたが、それが「プリセットから歌い方を選ぶ+適用量をツマミで調整する」の簡単操作でできるようになりました。

声の出だしに適用できるのが「ATTACK」、
声の終わりに適用できるのが「RELEASE」です。

ただ簡単なぶん小回りは効かず、
またATTACK・RELEASEそれぞれ1種類ずつしか適用できません
ピッチベンドやDYNのパラメータ自体は残っているので、
納得いかない場所があればそこで微調整することになりますね。

また、どこで何を調整したかを一覧で見れないので、そこは不満点です。

カバー曲「君が飛び降りるのなら」

VOCALOID5 Editor+鏡音V4Xでカバー曲を歌わせてみました。

「君が飛び降りるのなら」(原曲:Omoi様)

・パラメータの手動変更はCharacter(旧ジェンダーファクター)とBRIのみ。
・ATTACK / RELEASE EFFECTをところどころ適用して歌い方を変えています。

この曲のようにテンポが早くてパワーが必要な場合は、
「ATTACK EFFECT」→「DYNAMICS」→「Accent3」
サビの強調したい言葉に適用するだけでもかなり変わります。

歌詞もメロディも好きな曲で、
シチュエーション的にもレンが歌っているのを聴いてみたかったので
この機会に自給自足しました。

のちほど改めてじっくり歌わせたうえで動画サイトに投稿する予定です。
【追記】フル版を投稿しました。こちらはがっつり調声を加えています。
 ニコニコ動画版はこちらから

 

カバー曲「Nyanyanyanyanyanyanya!」

うちの鏡音レン(V4X)がVOCALOID5の力で驚くほど猫になりました。
レンなら何でも許せる方はぜひお聴きください。

【追記】動画サイトにも上げました。ニコニコ動画版はこちらから

 

「Nyanyanyanyanyanyanya!」(原曲:daniwellP様)

・パラメータの手動変更はCharacter(旧ジェンダーファクター)のみ。
・ATTACK EFFECTで「Catty」を全ノートに適用後、
 エディタ上でピッチを曲に合うように下げました(マイナス9)。

ひととおりATTACK EFFECTを試した中で、猫っぽい声に変化させる
「Catty」が衝撃的だったのでついやってしまいましたw

ちなみに猫のほかにカエルや豚の鳴き声みたいに加工するエフェクトも
用意されているのですが、そちらは私は公開する勇気が出ませんでした。

 

導入にあたってつまづきそうなポイント

・VSTiとして認識させる際の、DAW側でのパス指定方法

DTMステーションさんの記事にもありましたが、
デフォルトではVSTiのdllファイル「VOCALOID5 VSTi.dll」
「C:\Program Files\Common Files\VST2」に置かれるので
DAW上で認識されない方はパスとして指定しましょう。
なお、インストール先はプログラム本体含めて強制的にCドライブになります。

なお、私はメーカーごとにdllファイルをまとめて整理しているので
試しにdllをコピーして別フォルダに置いたものを認識させましたが
特に動作に関しては問題ないようでした。

・パラアウトの方法
VOCALOID5 VSTiを使い、リアルタイムでパートごとにDAWに出力する方法で
つまづく方も多そうです。

①右上のミキサーボタンを押す
②画像の赤い四角で囲ったところの「Master」を「Bus1」「Bus2」などに変更
③各トラック側の出力を「Track1: Stereo」 など、対応する数字に合わせる

これでできるようになります。

よくある質問

・本体と歌声ライブラリは別々にダウンロードできる?

購入後は別々にダウンロードできます。

・無料の「Cakewalk by BandLab」でも動く?

私はSONAR使いで今はCakewalk by BandLabで楽曲制作していますが、
とりあえず動きました。上記カバー動画も全部Cakewalkで作ったものです。
ただし動作には若干不安定さがありますので、今後改善してほしいですね。

・スタンドアロンでも起動する?

VSTi対応というのが全面に押し出されていますが、
普通にスタンドアロンでも起動できます。
私の環境では特別な操作をしなくても、今までインストールしていたVOCALOIDが
一覧に表示され、選択することですぐに歌えるようになっていました。 
(ただしV3,V4ライブラリのみ。V2は非対応)

・自動でいい感じに調声されるの?

目的の声に素早くたどり着けるようになりましたが、
自動でいい感じにはならないので
「職人のやることが無くなる」わけではありません。
あくまで時短メインのツールだと思いましょう。

・動作は重い?軽い?

パラメータをいじってから発音が反映されるまで少しかかります。
特にノートの数が増えてくると、
複数ノートを変えるときにモタツキが大きいです。

・ベタ打ちはV4より上手い?

ほとんど変わらないと思います。
上記の「nyanya~」では、レンV4X Powerの声が
なんとなくトゲトゲしさが減ったような気はしますが誤差の範囲内かもしれません。

結局VOCALOID5は買いなのか

私は今回「買いか買いじゃないかとかそういうのは考えず、とりあえず飛び込んで出来ることを探していこう」というスタンスで即買いしたのですが
検討中の方も多いかと思います。

結論から言うと、
「『Piapro StudioもしくはV4 Editorで出来てV5 Editorで出来ない』ことを
 やってないなら買い」

「そうでない場合は自分の使い方と相談して検討」
という感じですかね。

・V4 EditorにできてV5 Editorにできないこと

現時点では以下の機能が搭載されていないようです。

■クロスシンセシス
■Job Plugin
■ユーザー発音辞書
■V4までのビブラートのかけ方(スタイル設定とATTACK/RELEASE EFFECTに統合?)

特に、Job Pluginやクロスシンセシスを使った調声をしていた人は要注意です。
私は「クロスシンセシスでPowerに2割くらいWarm混ぜる」とか、
「Job Pluginで合唱がより自然になるようにピッチをずらす」などしているので
両方ダメです。

・Piapro StudioにできてV5 Editorにできないこと

■クロスシンセシス
E.V.E.Cなど、クリプトンボカロの持つ独自機能 E.V.E.Cなど、クリプトンボカロの独自機能を簡単に入力できるUI (※E.V.E.C機能自体は発音記号の分割および手動入力により手間がかかりますが調整可能です。これはV5 EditorだけでなくV4 Editorでもできます。ご指摘ありがとうございます)
■複数のパラメータを同時に表示しながらの調声
■まとめて複数ノートのビブラートを変える

私は「MIDIからメロディ取り込んだあとに全ノートに50%の弱いビブラートをかける」みたいなこともしてるのでこれもアウトですね…

特にクリプトンボカロ使いの方は、V4XのPiapro Studioを使ったほうがいい場面も
多くあると思いますので、無理に乗り換える必要はありません。

ただピッチベンドやグロウルのパラメータをいじらなくても
エフェクトでそれっぽく簡単に仕上げられるのはV5 Editorの魅力です。

なので本当に冒頭に書いたように、私自身はしばらくは
「スーパーの惣菜コーナー」としての使い方がメインになると思います。
うまく自分で作った料理と取り合わせて最終的にいい感じの食卓にすればいいんです。

購入にあたっての検討材料になれば幸いです。


Top