令和時代の個人サイト制作入門(1)個人サイトを作る意味・メリット【WordPress】 | G.C.M Records

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令和時代の個人サイト制作入門(1)個人サイトを作る意味・メリット【WordPress】

2019年9月22日開催「技術書典7」へのサークル参加が決まった時に、
「本の内容をブログで全部書いていってどんどん更新をしていき、最終的にそれを本にする」
ということを宣言しました。

限られた執筆期間の中、アウトプットを出しながら完成形に持っていこうというもくろみです。

8月31日土曜日と9月1日日曜日開催、マジカルミライの中で行われる
「クリエイターズマーケット」に出す作品もようやく入稿などの準備が済みました。

それらはまた別の記事として告知していきたいと思いますが、
こちらの方にも本腰を入れていきます。

今回はまえがきから最初の導入部分までの記事を執筆したのでこちらで公開します。
これは本にするとだいたい7~8ページぐらいの内容に相当する部分です。

今後どうなるか分からないですけど、これを重ねていき
最終的にそれなりの分量の本にできればいいなと思っております。

まえがき

近年のインターネット技術の発展により、
各種ブログサービスやTwitterや Pixiv・YouTubeなどを通じ、
個人が無料で気軽にコンテンツや文章を投稿できる時代になりました。

同人作家やミュージシャンなどのクリエイターにとっては恵まれた環境のもと、
誰しもが個人制作のコンテンツを通じて活躍できるようになったといえます。

一方で振り返ると、インターネット黎明期から2000年代中盤には
個人のWebサイトを制作して同人活動を行うことが一般的でした。
キリ番文化など、今となっては懐かしい響きがします。

そこではHTMLを書き、アクセスカウンターを設置し、CGIの掲示板を置きという、
一定のWeb制作技術が活動するうえで個人のクリエイターに求められていました。

近年、Twitter や Pixiv などでトラブルがあるたびに
「昔の個人サイトに戻ろうぜ!」みたいな発言が流れてくることがよくありますが、
その反面、それに本気で取り組む方はあまり見かけません

それはやはり無料サービスに比べると高い技術的、金銭的なハードルが存在するからで、
仕方ない面もあります。

しかしながら現在は、全部HTMLの手打ちでやっていた時代よりも
はるかに高度なWebサイトを比較的簡単に作ることができる
ようになりました。

その強力な味方になるのが「WordPress」などの CMS(コンテンツ管理システム)です。
同人作家やミュージシャンがWebサイト の制作技術を身につけておけば、
かなり強力な武器になると思っております。

筆者(アンメルツP)は2002年にジオシティーズで最初の個人サイトを制作し、
様々な試行錯誤を経て、2014年WordPressに移行して現在に至ります。

もともとは日記サイトでしたが、
2008年からボカロ P として様々な曲やコンピ CD 制作といった様々な活動をするうえで
大きな味方になったのがこのサイトの存在でした。

自分の意見や情報を一箇所にまとめて発信できる公式サイトという存在は、
集客にも自己学習にもとても役立っているという実感を持っています。

現在は、コンピCDで制作したサイトなどが評価され、Webデザインの仕事も定期的に行っています。
今回、そういった自分の経験を還元したいと思い、本書(この記事ですね)を書きました。

技術レベルは技術書典に出ている他の方に比べると拙い面も大いにありますが、
同人活動も Web制作のことも、両方を経験した立場が大事だと思っており、
アウトプットを通じてこれから個人サイトを作る方も私自身も成長していければと思います。

個人サイト(同人サイト)を作る意味・メリットとは?

「WordPress による令和時代の個人サイト制作入門」という記事のタイトルに惹かれてここにたどり着いた方は
少なからず個人サイトの制作にご興味のある方と存じますが、
まずはこの2019年という時代に個人サイトを作る意味はいったいどこにあるのでしょうか?
改めて考え直してみる必要があります。

例えば絵を上げるだけならpixivやtumblr、Instagramなどで済むのではないかという声もあるでしょう。

ブログを書くのであればアメブロやlivedoor Blog、
最近は有料記事を売ることもできるnoteなどの各種ブログサービスもあります。

動画を上げるだけならYouTubeやniconicoもあります。
最近は普通の発言も含めてすべてYouTubeで完結するYouTuberも増えてきました。

しかもこれらのサービスはすべて基本無料
高度な機能を使うためには有料会員になる選択肢もありますが、ほとんどのことは無料でできてしまいます。

実際、大部分の人はそれだけでも困らない場面は多いのではないでしょうか。
いうよりも、現代ではもはやそれらのサービスを利用しないと
創作活動自体なかなか立ち行かない面もあります。

現代のサービスはやはり便利に作られているわけです。

私自身もこの個人サイト「G.C.M Records」を持ちながらも、
動画はYouTubeに上げていますし、普段の発言にはTwitterを使います。

個人サイトを作ったからといって、すべてを置き換えるのは難しいです。

ある程度の知識が必要なうえに有料

そして最初に申し上げますが、
これから取り上げる「WordPressによる個人サイト制作」は完全に無料では難しいです。

WordPress自体は基本的に無料(第3回で後述)ですが、ほかにある程度の費用が必要です。

具体的には、サーバー代ドメイン代に月額もしくは年額での費用がかかります。

本書では主に私が使っている「エックスサーバー」というサーバーを利用して
サイトを作る方法を書いていきますが、
このサーバーは月額1,000円ほどかかります。
(サーバーやドメインに関する詳しい説明は次章をご覧ください)



制作にある程度の技術知識と環境が必要で、しかも有料。
じゃあその中で結局個人サイトを作るメリットは一体何でしょうか?

筆者は、以下の理由があると考えます。

「マイホーム」だから圧倒的にカスタマイズが自由

投稿型のサイトに依存することのデメリットを考えてみますと、
利用規約やサイトの見た目(UI、インターフェース)が突然変わったり、
今まで使えていた機能が使えなくなった
…という経験は誰しもが一度は味わっているのではないかと思います。

自分の意図に沿わない修正が入り、不満を漏らす方も見かけます。

これは他人が作ったサービスに乗っかることの宿命でもあります。

家で例えるなら、既存のネットサービスは賃貸住宅やマンションのようなものです。
環境の良さはある程度保証されている反面、
マンションのオーナーの規約が変わったらその住み心地も変わってしまうということです。

しかもYouTubeやTwitterであればアメリカの会社、
TikTokであれば中国の会社など、
日本以外にグローバルに拠点を構えるネットサービスも多く存在します。

そのためTwitterの無限にオープンな設計思想と
日本のクローズかつハイコンテクスト(理解に際し様々な文脈や暗黙のお約束が必要になる)な同人文化など、
どうしても相容れない部分が存在し、衝突が起こることも度々あると実感しています。

それに対して、個人サイトは家で言うところの一戸建て、マイホーム的な存在といえます。

確かに個人サイトを作るのは少し面倒です。

「必要な手続きを踏めば誰でも作れる」ことは間違いない事実ですが、
特にパソコンを持っていなくてもスマホだけで十分生活が成り立つような時代に、
「1から作れ」ともなかなか軽々しく言えない存在なのではないかと思います。

私自身も最初の5年くらいはパソコン用アプリ『ホームページNinja』(もはや懐かしい)や
『ホームページ・ビルダー』といったソフトの力を借りてやっと作っていました。

マイホームを作るなら「設計図を作る」という技術もありますし、
「大工道具で家を組み立てる」という工程もあるので、
やはりある程度の知識は必要となります。

それでも、(サーバー会社の規約があれども)他のプラットフォームに乗っかるよりは
自分の意志で行えることが多い
のが、やはり個人サイトの特徴です。

例えばデザインも自分自身で色々変えることができます。
その家の間取りやどんな家具を置くのか、その色も自分の意思だけで
すべて決められるということです。

そういった自由さとカスタマイズ性が、個人サイトの最大の魅力です。

自作品のアピール・ブランディング

制作した個人サイト自体が、自分のクリエイターとしての作品の一部、
いわばポートフォリオとして見せられるという面もひとつのメリットです。

とりわけ絵師さんやデザイナーさんは、サイトを自分の作品としてアピールでき、
それを通じて新しい仕事につながるということもあるでしょう。

同人活動もそうですが、特に商業的なクリエイター活動を目指していく人ほど、
「公式サイト」として位置づけのできる存在が重要になっていきます。

クリエイターの名前でGoogleで検索をしたとき、
ネットサービスを利用しているとそちらが上位に引っ掛かることがあります。

YouTubeのチャンネルページやpixivプロフィールページがヒットしますが、
それはあくまでYouTubeやpixivというサービスを利用している一人のメンバーという扱いです。

そこで個人サイトを持つと、そのサイトが検索に混ざってバーンと引っかかるわけです。

Google検索で個人サイトが引っかかった様子
Google検索で個人サイトが引っかかった様子

作品だけを蓄積している場所だと、
自分自身のお知らせがどうしても埋もれがちになりますので、
これは自分のお知らせを発信するときにとても効力を発揮します。

何かあったときはここを見ればいいという存在証明にもなりますので、
なりすましの防止にも効力を発揮します。

スクリーンショットなどの画像はいくらでも加工ができるため、
ソースとなるWebサイトがあると、信頼にもつながるといえます。

個人サイトを出発点(ハブ)として、投稿サイトや通販サイトなど
他のサービスへのリンクを張り巡らせてスムーズに誘導させる、
そういったルート作りにも大変役立ちます。

このように、いざ自分の家があるとブランディングにとても役立ちます。

また個人サイトがある程度自力で作れると、
そこそこWeb に関する技術への理解があるとみなされますので、
その点でも対外的に役立ちます。

もちろん本業エンジニア・デザイナーの方にとっても、
技術力を証明する場所になるので作っておいて損はありません。

身内向けサイトの制作も

また上記の逆パターンですが、
検索避けやパスワードなどの設定を行うことで、完全に身内だけに向けたサイトも制作可能になります。 

昔の個人サイトでは、
二次創作の対象物の運営元などがエゴサーチをする際に見つからないようにするための配慮として
(半ば同調圧力的に)こういった設定を行っていた方が多かったように思います。

TV番組「ポツンと一軒家」じゃないですけど、
人里離れた場所を選んで家を作ることだって可能、
要するに自分でどれぐらい露出するかのコントロールができるというわけです。

外部のサービスを利用すると、コンテンツの個人によるコントロールが少し難しくなります。

例えばniconicoの規約は、
niconicoが勝手に投稿された動画を外部のメディアに紹介するのも自由というものになっています。

2.運営会社による投稿コンテンツの利用

利用者は、投稿コンテンツをアップロードすることにより、運営会社(「niconico」を運営する株式会社ドワンゴ及びその子会社を含みます。以下本条において同様です)に対し、投稿コンテンツを自由に利用できる世界的、非独占的、無償、サブライセンス可能かつ譲渡可能な許諾ライセンス(以下、「本ライセンス」といいます)を付与するものとします。利用者は、運営会社に対し、投稿コンテンツについて本ライセンスを付与するために必要な権原を有すること並びに当該投稿コンテンツの内容が法令及び本規約に違反するものではないことを表明・保証するものとします。

投稿規約 | ニコニコ動画 からの引用

たまたまniconicoを例にとりましたが
他の投稿サイトも似たような感じですので、確認してみてください。

自己の成長

サイトの更新に力を入れすぎるあまり本業が疎かになってしまうのは本末転倒ですが、
Webサイトの制作にはクリエイティブな部分も求められます。

そのため、絵の作り方や作曲にも意外と相乗効果をもたらす事があると思います。

論理思考力の向上

WordPressを利用すればまったくコンピューター言語を覚えなくても
ブログ記事の更新のような運用自体は可能ではありますが、いざ本格的な運用にあたっては
最低限のコンピューター言語に関する知識は持ち合わせていたほうがスムーズです。
覚えておくとカスタマイズの幅が広がりますし、トラブルが起こった時も自力で解決ができます。

コンピューター言語はどれも論理立ててひとつずつWebサイトの形や動き、デザインの要素を形作っています。
覚えれば覚えるほどに自分のできることが増えていきます。

そして論理的な思考は、デザインや他の作品作りにも必要なことだと実感をしております。

私自身『ボカロビギナーズ!ボカロで DTM入門』という本を以前に執筆させていただいたんですが、
そこで主張していることは、作詞や作曲は「何か特別な才能」で作るものではないということです。

特別の才能のない普通の人でも、理詰めで音楽は作れる。
そのための方法を紐解いていくというアプローチで取り組んだことを覚えています。 

※ここではHTMLやCSS、PHP等をまとめて「コンピューター言語」と呼称しています。
それぞれどの場面で使うかなど、別の記事で解説します。

また、ブログで伝わる文章を書いたり、簡潔にわかりやすいタイトルをつけることは、
自分自身の思考を整理するためにも大事
だったりします。
人間、他の人に教えるときが一番学習の機会だと思っています。

広報力の向上

また、現代は残念ながら単純に作品を作っただけでは見てもらえることは少なくなっています

その理由は皮肉かな「誰でも作れるようになったから」です。

人間の余暇に使える時間には限りがあり、その中でどの作品を取捨選択するかを常に求められています。

ですから作品の数が爆発的に増えた現状では、単純に作るだけではなく
それをどのように見てもらうかという戦略も自然に求められます。

そういう意味では、広報力や広報のための技術を身につけるためにも、
個人サイトの制作は重要な役割を果たすと思います。

副収入にもなるかも?

怪しい響きですが、これをモチベーションにする人も間違いなく存在するでしょう。

ネットサーフィンをしていると、ブログの記事に広告が入っているものをよく見かけます。

これらは、Google が見に来た人に合わせた広告を表示する「Google Adsense」(グーグルアドセンス)や、
Amazonなどで物が購入されると自分に紹介料が入ってくる「アフィリエイトリンク」などを通じて、
ブログ主が収入を受け取れる仕組みを活用しているわけです。

ボカロビギナーズ!ボカロでDTM入門 第二版 (NextPublishing)
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もっとも審査もあり、やろうとしたことが簡単に実現できるわけではありませんし、
肝心の儲かるかどうかなんですが99%の人は儲かりません。

それこそ上位のYouTuberのごとく、人生を賭ける勢いで記事の更新に取り組んでる人がなんとか儲かるのかな?
くらいのレベルだとは思います。 

この個人サイトはいま月に1~2万人ほどのアクセスがありますが、
それぐらいの人が来てもサーバー代が出るか出ないかぐらいの収入なので、
これだけで暮らせるとは考えないほうがいいと思います。

それでも単純にサーバー代がまかなえたら嬉しいですよね。

クリエイターは自分の作品を売ることが最優先なので
広告収入は二の次ぐらいに考えておいたほうがいいと思いますが、
まあオマケでついてくるという風に考えましょう。 

次回は個人サイトを作るには何が必要なのかという部分を説明します。

★こちらの連載を同人誌にした『令和時代の個人サイト制作入門
紙の本およびダウンロード配信(PDF)を各種同人ショップで実施中です。
140ページの充実した内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

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