ソフトウェアシンセサイザーが音を出す方式5種類を紹介【VSTi】 | G.C.M Records

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ソフトウェアシンセサイザーが音を出す方式5種類を紹介【VSTi】

はじめに

この記事は拙著『VST Lovers ~このVST(i)プラグインが熱い!~』の文章を再構成したものです。
(第2章 2-6「シンセサイザー」冒頭の補足文より)

そもそもVSTプラグインとは何かに関する説明はこちらをご覧ください。

『VST Lovers』では、シンセサイザー(シンセ)として24種類のVSTiを紹介しています。

一般的には電子的に合成された音を出す機器全般をシンセサイザーと呼ぶので、
そういう意味では全VSTiがシンセサイザーではあるのですが、
ここではシンセサイザー以外では出せないような特徴的な音色を合成によって出せることを
ウリにしている音源、というくらいの感覚で分類しています。

シンセサイザーが出す音という「結果」での分類

本の中では、メインとして出せる音の種類により、
「総合/リード系」「ベース系」「SE系」「8bit系」にさらに細かく分けています。

派手で芯が太く、音の減衰がはっきりしており、
メインフレーズを奏でる
のに適した一連の音色のことをシンセリードと言います。
ここでのリードは木管楽器のリードではなく、先導するという意味のLeadです。

それに対して、包み込むような空間的な左右の音の広がりがあり、
音の減衰が柔らかく、曲の後ろで鳴らすのに適した一連の音色シンセパッドと呼ぶことがあります。
(本の中ではシンセパッドメインのものは寄せられた数が少なかったので「総合/リード系」に統合しています)。

シンセサイザーのうち特にベースとして使われる音に強いものを「ベース系」
効果音に強いものを「SE系」として分けています。

最後に、
1980年代に発売されたファミコンなどの初期テレビゲームでよく使われた
電子音を表現できるシンセサイザーが「8bit系」です。

8bitサウンドを中心に作られた音楽を「チップチューン」と言います。
強烈な個性がある音ですので、他のどんなジャンルに混ぜても大きく主張します。

シンセサイザーが音を出す「過程」にも種類がある

このように曲の中で様々な用途に使用されるシンセサイザーですが、
メインとして出る音という「結果」とは別に、
「過程」の部分で、シンセサイザーが音を出す仕組みというのが何種類かあったりします。

今回はその中から代表的なものを5つ紹介するとともに、
その中から各方式を採用しているおすすめのシンセサイザーVSTiをそれぞれ紹介したいと思います。

実際には、この中から複数の方式を採用しているものも多いです。

バーチャルアナログシンセ(VAシンセ、減算合成方式)

「減算合成方式」とは、
そもそもは物理的な回路を用いて音を出すアナログシンセサイザーにおいて多く採用されていたものであり、
現代のハードシンセやVSTiシンセでも普及率の高い、シンセサイザーの王道とも言える方式です。

「オシレーター(発振器、VCO)」で生み出した音の固まりを、
「フィルター(VCF)」で自分好みの音になるように削り取って、
「アンプ(VCA)」で音量に変化をつけて送り出すというやり方です。

木から彫刻を作るように、フィルターで削ることが音作りにおいて重要であり、
「減算合成方式」と呼ばれる理由となっています。

上記3つのメイン機構のほか、「LFO」「EG(エンベロープ・ジェネレータ)」という、
各メイン機構にちょっかいを出すサブ機構が備えられており、
この組み合わせによって複雑な音を作り出せるものが一般的となっています。

減算合成方式のおすすめVSTi

Software Synthesizer Synth1
https://daichilab.sakura.ne.jp/softsynth/

長年にわたってDTMerから愛されてきた、無料配布のシンセサイザーです。
減算合成方式のシンセに関係するパラメーターは一通り実装されており、音の作り方を学習するにも向いています。
個人による音色パッチの配布も充実しています。

加算合成方式

単純なサイン波をいくつも重ねていくことにより音を生み出すという、
減算合成とはまったく逆のアプローチをとった方式です。

数十~数百の波を重ねていくことで理想のサウンドに近づけるわけですが、
ひとつずつの波を手作業で設定させるのは非現実的ですので、
加算合成シンセの多くはその操作をある程度簡易化してユーザーに見せるような
インターフェイスとなっています。

理論上どんな音でも頑張れば出せますが、減算合成方式に比べると複雑な計算を必要とするため、
CPU負荷は一般的に高めと言われています。

加算合成方式のおすすめVSTi

Synths : Razor | Komplete
https://www.native-instruments.com/jp/products/komplete/synths/razor/

デモ音源を一聴するとわかる通り、強烈なエッジの効いた音が特徴のシンセサイザーです。
Ultimate以上のKOMPLETEにくっついてくるので、未チェックだった方も持っているかもしれません。

FM方式(FM音源)

サイン波を周波数変調(Frequency Modulation)させることで、
複雑な音を生み出せる仕組みを備えたシンセサイザーです。

減算合成を引き算、加算合成を足し算に例えるならば、
このFM音源は掛け算を用いたものであるとも言えます。

FM音源の中にはオペレータと呼ばれる発振器が何個かあり、
あるオペレータで別のオペレータを変調させると、設定によって大きく波形が歪みます。

その歪んだ波形でもってさらに別のオペレータを変調させ……
という具合で、コントロールは難しいものの、
比較的少ない使用メモリから少なめの手数で様々な音を生み出すことができました。

それゆえ使用できるメモリ容量が限られていた80年代ゲーム機の内蔵音源としても使われ、
ファンも多い合成方式のひとつです。

詳細な仕組みは難解ですので、
より深い知識を知りたい方はネットや文献などをあたってみてください。

オペレータの接続方法や、変調させる強さなどを操作できます。

FM方式のおすすめVSTi

Synths : Fm8 | Komplete
https://www.native-instruments.com/jp/products/komplete/synths/fm8/

こちらは普通以上のKOMPLETEを買うとついてきます。
「Easy/Morph」という設定画面は、難解な合成方式をあまり意識させない操作体系になっています。
まずはプリセットで良さげな音を見つけてからそれを少しずつ加工することに挑戦してみましょう。

PCM方式(PCM音源)

あらかじめメモリに記録されている原音を、演奏に応じ加工して出力する方式です。

PCMとは「pulse code modulation」(パルス符号変調)のことで、
アナログ信号をデジタル信号に変換するための方式のひとつであり、
CDWAVファイルなどに用いられています。

「44.1KHz、16bitのWAVファイル」とは、
PCM方式によって1秒間に44,100回、アナログ信号を標本化(=サンプリング)のうえ16bit
(0と1の組み合わせが16個)のデジタル信号に変換したデータのことを意味します。

原音を合成する性質から、他の方式のように音を根本的に変化させる大きな加工は苦手ですが、
単音だけでなくフレーズごと出力できるといった特徴は他に無いものです。

素早く調理できてそれなりに美味しいという、冷凍食品のような存在ですね。

PCM方式のおすすめVSTi

Nexus | reFX
https://refx.com/nexus/

とにかく元の音に非常に完成されたものが多い(ハズレが少ない)のが特徴で、すぐに実戦に投入でき、
そこそこのクオリティの楽曲を素早く作れるというのが最大の特徴です。
私の作曲においても最近は欠かすことのできないツールのひとつになっています。

M1 V2 for Mac/Win – MUSIC WORKSTATION | KORG (Japan)
https://www.korg.com/jp/products/software/kc_m1/

Nexusより安価に手に入る総合音源。
シンセサイザー「M1」をソフト化したもので、同シンセが多用された1990年代風の楽曲を作る際に活躍します。

グラニュラーシンセ

今までの方式の中では実用化が比較的新しい技術です。

サンプルを加工して出力という点ではPCMと共通ですが、
グラニュラーシンセはその加工方法に特徴があります。

サンプルを細かく切り刻んで、それらを並べ替えて再構築することにより、
元の音からかけ離れた音や、逆に元の音のニュアンスを残しつつも新しい響きの音を出力できるのです。

パラメータとして、切り刻む細かさ・長さの単位や、並び替え方などを指定できます。

グラニュラーシンセのおすすめVSTi

Spectrasonics – Omnisphere 2
https://www.spectrasonics.net/products/omnisphere/index.php

一生使えるシンセサイザーとしてDTMerにはお馴染みの「Omnisphere」。
このシンセ自体は様々な合成方式を搭載しているのですが、その一機能として「グラニュラー機能」があります。

これは、好きな音素材を読み込んで、その素材をグラニュラーで加工できるというものです。
こちらの動画から分かるように、かなり強烈な個性を持った音を作れることがわかります。

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著者「アンメルツP」について

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