柴さんのボカロ音楽史本の参考書籍に「ボカロビギナーズ!」が掲載&トークイベントに参加しました

G.C.M Records by アンメルツP

ボカロP「アンメルツP」の活動記録サイト
鏡音リン・レンなどのVOCALOIDを使用したオリジナル曲やカバー曲を作っています。
ボカロ曲による同人CDや、作曲・DTM初心者のための同人誌も発行しています。

柴さんのボカロ音楽史本の参考書籍に「ボカロビギナーズ!」が掲載&トークイベントに参加しました


音楽ライターの柴那典さんが、自身のこれまでの取材や経験に基づき書かれた
VOCALOIDを用いた楽曲やムーブメントを音楽史的にとらえようという本
「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」を4月3日に発売しました。

この本の巻末に参考書籍として、
われらが「ボカロビギナーズ!」シリーズの名前も挙げられています。

本そのものは昨日入手してまだ全部は読んでいないのですが、
氏の知識を元に「サマー・オブ・ラブ」などの過去の音楽ムーブメントと
VOCALOIDを取りまく動きを結びつけるなどの分析をされており、
音楽に対する熱量が文章から伝わってきます。
序章は柴さんのブログで読むことができます。

さて、その柴さんがゲストとして、評論家・ライターのさやわかさんに招かれ
開催されたトークイベント「さやわか式☆現代文化論 第6回『初音ミクの真実!』」
昨日行ってきました。

その中で、ボカロや音楽シーンのとらえ方として↑のような興味深いお話が
色々と聞けましたので、その一部をメモ書きからご紹介します。

有料(823pt)ですが、全編はニコ生のタイムシフトで見ることもできるようです。


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さやわかさん(以下さ)
まず単独で「柴さんの本はどこがいいのか?」を解説

(1)音楽史に初音ミクを位置づけている
(2)ムーブメントの変節をちゃんと指摘している
(3)ムーブメントの変化を網羅している
(4)越境の可能性

(1)音楽史に初音ミクを位置づけている

1960年代後半 米国「サマー・オブ・ラブ」
1980年代後半 英国「セカンド・サマー・オブ・ラブ」
これに続き、2000年代後半、日本で起こったボカロムーブメントを
この本では「サード・サマー・オブ・ラブ」と定義している。

ムーブメントの裏テーマとして「テクノロジーと人間の親和」がある
サイケデリック(ビートルズ中期)、クラブ音楽(イビザ)、初音ミク
電子音楽の潮流

(2) ムーブメントの変節をちゃんと指摘している

サマー・オブ・ラブ(1967年)→ウッドストック(1969年)の流れのように
初音ミクもまたムーブメントが移り変わっている。
・楽曲の流行、キャラクター性の変化 ボカロ自体の多様化
・初期のムーブメントを知る者と今のリスナーの乖離
さ「柴さんの本は、このへんをかなり気を遣いつつまとめている」

(3) ムーブメントの変化を網羅している

ネタ、キャラソン、Pの誕生(supercell、kz)、人間とのn次創作(歌ってみた)
物語音楽(悪ノ、カゲプロ)、オーバーグラウンド(The Endなど)
・「The End」論にページを割かれている
・「いるのにいない」「生きているのか死んでいるかわからないモノ」

さ「The Endは消失でとっくに通過した道じゃないか?と思っていたが、
  これを読んでみて、『生⇔死』という幅というのは
  初音ミクやボカロの多様性の幅そのものなのではないかと思った」

・キャラクター論とポピュラー音楽批評の双方が壁を超えられなかった感がある
(それは同時に、双方のファンと支援メディアが超えない壁でもある)

「キャラ」「n次創作」だけではない、音楽シーンとしての変遷

(4) 越境の可能性

・あらゆる意味でこの本からボカロ以降を語れる
・今ニコ動で受けてる曲の傾向について BPM早い問題、カラオケのゲーム化
・さらに需要論的(音響的)アプローチの可能性が残されている気がした
 (リスナーにとって、聴いてどうなるのか?っていう点)

(ここで柴さん登場。二人でトークを展開)

柴「リアル友人の娘が初音ミクにはまっていてサイン欲しいと言われた。
  同年代か少し上から「娘がハマっている」と本当に言われる」

over30と10代の文化断絶

柴 「学校の図書室に行っているタイプの10代女子に響く」
「中二病」は褒め言葉として。
ロキノン系は、やっぱり夢見がちな中二病の音楽
かつて洋楽(オアシスやレディオヘッド)が担っていたものが、ボカロなんじゃないか
だからこれって、over30の洋楽リスナーにも響くのではないか?
「ボカロ聴いてる俺やべー」でも、それでいい

本のタイトルについて
太田出版の社長「音楽史ではなくビジネス書として売りたい」
クリエイティブのルールが変わった。ではどうすればいいのかの指南書に
柴「じゃあ、『世界を変えた』とかどうすか?」社長「それ!」
  →で、「初音ミク音楽史」からタイトルを変更する

反響として、「熱い」多数
ただ「キャラソン的なものを下げてるんじゃないか」という反応も

柴「音楽業界の人はみんなスルーしていたので遡って勉強して書くしかない。
  音楽メディアに携わる者全体の反省を込めて。
  CD売れない売れない、ライブの時代だ、とか。
  ポジティブなことが書けなかった反省点」

さ「今の人って音楽に興味ないとか言われがちだけど、
  ニコ動のコミュニケーションって全部音楽が中心にあるよね」

カラオケで歌われてもお金が入らなかった件について
柴「(JASRACの部分信託という解法は)
  これ、ボカロシーンでなければできなかったよね。
  お金をもらうスキームができた」

60年代「帰ってきたヨッパライ」
アマチュア学生が遊びで作ったレコードが売れた 
   → インディーズレコードという概念の誕生

いろんなムーブメントはアマチュアから誕生し、
どうやって商業化するかという流れをたどっている

ただしムーブメントのゴール、終わりも商業化である
(メディアとビジネスマンが入ってくるとき)

柴「取材時、クリプトンの社長に『ブームは5~6年で終わるんです』って言った」
いまはブームが終わった時である。
でも、ロックは死んでないし、今までに40年続いてる。
テクノブームも終わったあと死んでないし、20年続いている。
そのように、ブームが終わってもこれからは内実が豊かになっていく

そういう意味も込めて言ったら、
社長「初音ミクは情報革命の一端である。情報革命はこれから50年かけて
   起こっていくので、その始まりが初音ミクだ」
と切り返された
むしろ社長がビジョナリストだから、初音ミクが今まで続いているんだと思う。
商業化も慎重に進めてきた。

さ「どうして音楽産業が初音ミクムーブメントにすぐ乗れなかったのか」
柴「うちとは関係ないという壁を最初に作ってしまった」
さ「あえておもちゃみたいに作ったものを、『おもちゃじゃん』と言ってしまった」
ニコ生コメント「ツッコミどころがあるのがでかかった」

ニコ動はツッコミに適した場所
ニコ動が著作権違反対策を強化し始めた頃に、ちょうど初音ミクが登場した
pixivの誕生も2007年
pixiv片桐社長「うちはあのタイミングに立ち上げたからpixivになれた」
クリエイティブのルールができた年

柴「2027年に10代の若者が熱くなってることが、次に世界を変える」
 「7の付く年に注目。00年代はフェス文化で、フジロックの誕生が1997年」

柴「これから音楽の受容のされ方が明らかに変わる。
  例えば、カゲプロはCDで聴くよりも動画で見たほうがすっと入ってくる」

20世紀はレコード文化だった。
蓄音機の誕生→レコード会社 音楽の録音という巨大なイノベーション

さ 「今は、動画やダンスと結びつく。
   別のものに付随してるけど、『常に』付随している」

・サカナクションがレーザーやオイルアート使うステージをやってる話
・BUMP OF CHICKENもそこに照準合わせてきてる(4/5のライブを見て柴さんの実感)
 チームラボと組んでる、お客さんが照明などに参加できる。
 柴「めちゃくちゃ楽しい」 さ「盆踊りのスゲーやつ」

BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」の話
後からミクを合成じゃなくて、一緒にやりたいっていうところにメンバーはこだわった
前述の「いないのにいる」という話にもつながる
BUMP、ボカロファン双方が衝突が少ない形で見せることができた

2000年代前半、BUMPの曲が題材のFLASHが流行った。ネット文化との親和性
ミスチルやB’zらと比べると、BUMPはゲーム的なリアリティを持っている

柴「ローティーンの子にBUMPの歌が届いた。」
ロックバンドの宿命としてファンが年をとるというのがあるが、
エバーグリーンなBUMPが今のティーンに届いた。

さ「初音ミクのキャラを、今のティーンは愛しているの?」
柴「最初はサンリオやディズニーと並ぶような、可愛いものとして入るだろう」

マジカルミライの展示は、最初にイラスト、雪ミク。その先にフィギュア
最後にソフトウェアの展示がある。だんだん正体がわかるように考えられている

60年代、ベンチャーズで「エレキ」(=楽器名)っていうジャンルが確立した。
その当時は電気を使う楽器というものが革命だった。
「ボカロ」っていうジャンルは、つまりそういうことなんじゃないか

40年後の女の子にとっては「小説を書く」=「曲を作る」になっている気がする

ポケット・ミクについて
ネット文化と切り離した存在。
中高年とかも「しゃべるシンセなんだ」と理解できる
ボーカロイド文化が新しいフェイズに達する可能性を持つデバイス

柴「最新情報。ボカロは郊外カルチャーと結託しはじめている」
WonderGOOみたいな郊外の本屋でボカロCDが売れているらしい

本屋の担当者「一番強いのは「ヒップホップとレゲエ」(クルマ文化、ヤンキー文化)
    でも、クラブ系楽曲中心のボカロ系コンピもそれなりに売れている」

担当者「だって、痛車とかあるでしょ」
柴「地方では、ヤンキーもオタクも車に消費が行くんだ」

さ「オタク文化とヤンキー文化はわりと近い存在だよね」
柴「『あいつら』という言葉に、敵をイメージするか味方をイメージするかの違い」
(会場爆笑)
キャズム超え、マジョリティー化が進んでいる?

柴 「正史を作ろうと思ったけど、正史というのはまさに偽史でもある。
  ひとつのテーゼとして出したので、アンチテーゼも必ずあるけど、
  これをスタートにして議論ができることがこの本の意義」

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一応こんな感じでした。
非常に濃かったので削るところが少なくて長文になりました。

柴さんの本は、「同人音楽とその周辺」(著:井手口彰典)および
「ソーシャル化する音楽」(著:円堂都司昭)同様に、ネットを中心とする
現代の音楽文化を知るために重要な一冊となるかと思います。
興味がある方はぜひチェックしてみてください。




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